※観覧車は昔から乗れました
ジェットコースターとか人間の乗るもんじゃねぇ
じゃあ何が乗るんだよ、っていうツッコミは無しで。
昔、本当にこう思っていました。
昔といっても、たかだか数年前。
ジェットコースターに乗るヤツの気が知れませんでした。
なんであんなものに乗るのかがわからない、馬鹿なのかな?って本気で思っていました。
ジェットコースターは人間の生存本能の欠如、とそれっぽく断っていました。
ただビビリなだけなんだけどね!!?
だから彼女も居ませんでした。うるせぇ。
そんな僕に転機が訪れる
これは今から6年前、中学2年生の頃のお話。
当時吹奏楽部に所属していた僕。
強化合宿的なものがあって、遠方の地へ行き練習に励み、その地の人たちに演奏を聴いてもらうっていう形です。
太陽と歌を求めるCMでお馴染みのあそこです。
練習も進み本番を終えた後、少しの自由時間があって遊ぶことができました。
部員みんなでアトラクションに乗るのです。
みんな、と言ってもいくつかのグループに分かれていましたが、僕のグループは大体こんな感じ。
僕、後輩の女の子数名って感じです。ハーレム。
僕は内心「うわぁ~ジェットコースター乗ろうよってなったらどうしようかな~先輩がビビってるのもなんかダサいしなあ・・・」って思ってヒヤヒヤしていたのです!
しかし、救いの女神がそこには居た。
グループの中に居た後輩の女の子、Aちゃんとしよう。
とても可愛くて小柄な子で、なんと大のジェットコースター嫌い。
ジェットコースターを想像するだけで泣き出してしまうような子。
他の女の子達もそれを知っていたようで、ジェットコースターに誘うのはやめよう、みたいな空気になっていました。すばらしい。最高。大好き。可愛い。惚れました。結婚しよう。
Aちゃんのおかげで僕たちのグループはジェットコースターに乗ることはなく、やさしめのかわいいアトラクションにのんびりと乗りました。幸せの時間。
しかし、平和は長くは続かない。
グループで行動して1時間ほどたった頃。グループ内の女の子でどうしてもジェットコースターに乗りたい子が居て、「ねぇ~乗ろうよー!!」なんて言い出している。
やめろ、うるさいだまれ、僕が権力者なら真っ先に言論統制している。
他の子も正直乗りたがっている、でもグループ内には乗れないAちゃんが。
その時、僕は名案を思いつき、発した。
「じゃあ僕Aちゃんと二人で待ってるからさ、みんなで乗っておいでよ!!みんなも乗りたいだろうし、だけどAちゃんを一人で待たせるのはかわいそうだからね、僕は大丈夫だよ、みんな行っておいで!!」
素晴らしい。我ながら完璧である。
これならば自分がジェットコースターに乗ることもなく、かと言ってみんなにビビリだと思われることもない。しかも優しい先輩でいられる。
これ以上にない名案だ。
みんなも、「じゃあそうしよっか、先輩すみません!Aちゃんと待っててください!」なんて言ってジェットコースターに向かおうとしている。うーん、実に素晴らしい。
しかしその時、すべてをひっくり返す声を僕の耳は聞く。
Aちゃんが突如「待って!!」とみんなを止め、そして驚きの言葉を発する。
「私も・・・行きます!いつまでの乗れないままじゃ恥ずかしいし、私頑張って乗ります・・・!」
僕は思わず目をカッ開いた。
恐怖に打ち勝ち言葉を発したAちゃんの目には涙が、他の女の子はAちゃんを褒め歓喜の声。
その中で一人佇む、僕。
Aちゃんの恐怖に打ち勝つ心により、急遽ドン底に落とされる僕。
いや、頼むからそんな気の変わりはしないでくれ・・・怖いものは怖いままでいいじゃないか・・・!と心の中で祈るもAちゃんの様子は変わらず。
僕の心の支えであった女神Aちゃんは、一瞬にして悪魔へと姿を変えた。
10分後、ジェットコースター乗り場に並ぶ僕の姿がそこにはあった。
僕の顔に生気は無い。おそらく断頭台へ運ばれる途中の人たちもこんな顔をしていたのだろう。
仕方がない。運命を受け入れるしかないのだ。僕はもうすぐ死ぬ。
通常とは違い、宙にぶら下がった状態。
人生初のジェットコースターがよりにも寄ってこんなイレギュラーなタイプとは・・
僕の人生らしいじゃないか・・・!などと必死に自分を納得させていたが納得出来るはずもなく額からにじみ出る汗は尋常な量ではなかった。
安全ベルトが下がり、いよいよスタート。
もう逃げることはできない。上り始めたピレネーは止まることを知らない。
きっと十数秒後には恐ろしいスピードで下がるのであろう。
さらば僕、さらばAちゃん。
頂辺に到達し、いよいよ下がる、覚悟を決めつばを飲み込む僕・・・!
うぉおおおおおおおおおおおおわあああ;あ;あ;あ;あ;ああああああああああぬはぁああああああああぎえぇぇええええぬはぁああああああんもぉおおおおおイェイヘイアハーンアーアーアーアーアー…アー…
た、楽しいッ・・・!
驚きである。まさか自分の中にこんな感情が湧いてくるなんて。
どうやら僕は知らなかっただけである。自分も生存本能が欠如している人間側であったということを。
乗ってみないとわからない。
この日僕がジェットコースターに乗らなかったら、きっとその後の人生で乗ることもなかったであろう。
この日Aちゃんが勇気を振り絞らなければこうはならなかった。
Aちゃんが気づかせてくれたのである。
Aちゃんも楽しそうにしている、さっきまで涙を流していたあの子は笑顔だ。
人間やってみないとわからないもんだなぁ
怖がって何もしなかったら、何もわからない。
少しでも勇気を出してやってみれば、何かがわかるかも知れない、何かが変わるかも知れない。
やってみれば1でも2でもなるかもしれない。
でもやらなかった0のままだ。
挑戦を恐れてはいけない。人間は立ち止まっていてはいけない。
まだ見ぬ未来へと突き進まなければならないのだ。
それを気づかせてくれた。こういう形で。
Aちゃんは身を持って僕に教えてくれたのだ。
感謝しなければならない。Aちゃんはやっぱり女神だったのだ。
僕はこれからも人生できっと様々な恐怖と遭遇する。
その時に逃げていては何も始まらない。
勇気を振り絞って挑戦してみようと思う。
あの時のAちゃんのように・・・
そうすれば、何かが変わるかも知れない・・・!
そんなAちゃんが今では僕の彼女です。
っていうラブコメみたいな展開はないです。あしからず。
てかAちゃん意外と気が強いことがわかった。怒ると怖いの。
じゃなんでジェットコースター乗れなかったんだよ・・・!ってしばらく思ってた。
人間なにがあるかわからないね(ニッコリ
おしまいっ